タイから帰ってきて1週間。まだ荷物は片付いていない…。むこうは夏と同じ気候だったのでTシャツやら夏用のスボンを結構持って行っていた。東京はもはや冬の気温で衣替えなどすでに完了していなければいけないのにタイ用のTシャツなどは行き場をなくしてそのままになっている。
最近忙しくなかなか整理できていなかったが、早いところやらないとうちの奥さんに怒られるだろうなと思っている休日の朝だ。
時間は遡って1週間以上前になる。僕はやたらと寒いホテルの一室で目覚めた。自分の部屋の室温を24~5度に設定しているはずなのにそれ以上に寒く感じる。
後からわかったのだが、タイでは日中30度以上。夜でも気温は20度は下回らず半袖で十分な気候だ。ホテルに泊まっている多くの人はエアコンをかけっぱなしで外へ出かける。自分の部屋の上下左右の部屋がガンガンにエアコンを効かせているので自分の部屋でエアコンをOFFにしていても冷えてしまうのだという。
それにしても寒い…。
ベッドから起き上がり、昨日ゴルフをやったことで身体が疲れているかと思ったが、案外疲労も蓄積していないし喉も痛くなっていない。体調もいいのでホッとひと息をついた。異国の地で目覚める時に体調が悪いのが一番最悪だ。日本でいるときほど昨夜は飲んでいなかったのでそれが良かったのかもしれない。
ホテルの窓から下を眺めると日本のそれとはまた異なった仏教寺院が見える。こっちの寺院の屋根は赤茶けたレンガのような色をしているし装飾も派手なのですぐにわかる。特徴的なのが赤茶けた屋根はラメ加工を施したかのようにツルツル、テカテカとしていて遠くから見ても光り具合から特別感を出しているように思えた。
「今日もまた暑くなるのか」と思いながらも僕は昨日のことを思い出していた。
…
昨日のゴルフ後、先輩達はタイに来たのに「有馬温泉」といういかにも日本人向けのマッサージへ出かけて行った。少し混んでいたせいで僕と一人の先輩は近隣のマッサージ店を探すことになった。
先輩は保守的で有馬温泉でマッサージを受けたかったと思うのだが、僕は30分以上も待っていられなかったので地理も全然わからない街を歩いて別のマッサージ屋を探すことになった。
あたりをキョロキョロと見渡し良さげなマッサージ屋がないか探していた途中、僕は道路で何かにつまずいた。
僕はふと足元を見てみるとそこにはコンクリートの下から顔を覗かす“鉄骨”があった。家や建物の躯体に使うえんじ色したゴツイあれだ。
道から錆びた鉄骨の一部が出ている光景に先輩と僕は二人で苦笑した。
「道のど真ん中に鉄骨って…」
「どんな職人たちのやり取りがあったんだよ!?」
日本とは比べ物にならないが、バンコクの街なみは総じて綺麗だ。台湾によく行く僕は似ているものを感じていた。
…が空を見上げてみればそこには黒い無数のラインが見える。電線の束 束 束だ。1つの電柱にそこまでの重量的付加をかけていいものかと心配になるくらいの電線と電柱の列が永遠に続いている。
道の真ん中から鉄骨。そして幾重にも重なった電線。正直中国ではよく見る光景だったが、バンコクの裏路地を見るとあまりに急激に発展し、その流れに取り残された一面を象徴的に表している光景だった。
そんな鉄骨話をしているとよさげなマッサージ店を見つけることが僕たちはできた。有馬温泉は混み混み。だがここは不思議とガランとしている。
中へ入ってみるとメニュー表を渡される。片言の日本語と英語混じりで話す受付の女性。僕らの目に留まったのは90分800バーツのオイルマッサージだった。
1バーツ = 約3.4円
東京ではマッサージの相場は10分1000円だという。つまり1時間6000円だ。先輩達はこれを基準にマッサージを選んでいるらしい。
タイのマッサージは格段に安いと聞いていたが、高いコースでも800バーツ。このくらいの値段でやってくれるのは非常にありがたい。ちなみに通常マッサージが60分350バーツというのもあったことを付け加えておく。
コースを決めると二階の部屋へ先輩と一緒に案内され、これを履けとポンとマットレスに紙のようなものを置かれた。
紙おむつのようなものだ。
人生初の紙パンツ。どうやらオイルでベトベトになるため履きかえるものみたいだ。
タイの外気温は暑い。でも室内は総じて寒い。エアコンが効きすぎな場所がほとんど。紙パンツ姿の僕と先輩は寒い部屋でマッサージの開始を待つことに。
オイルの香りは初めミントのようなもので、寒い室内のせいで詰まっていた僕の鼻をスッと通してくれ、その後にオイルが身体に塗られてマッサージが始まる。
オイルマッサージというものが初めてだった僕はもっとベトベトするものかと思ったが、実際にはサラサラとしたオイルだった。
施術してくれた女性はおばちゃんで、何年このマッサージを続けてきたのかは不明だが羽田空港でどんちゃん騒ぎをし、日本から深夜便で7時間弱のフライト。あまり眠れもせずゴルフをやり疲れきった僕の身体を察知するかのごとくピンポイントでもみほぐしていく。
“ゴッドハンド”とはまさにこのことだ。
何度も何度もリンパをもみほぐされていると悪いものが流れていくかのように実感できる。
ゴリゴリゴリ
肩周りから首回りにかけて本当にこんな音が何回もした。
その後腰のストレッチ。
日本にいる時、腰痛で苦しんで歩き方も少しおかしくなっていた先輩に腰のこのストレッチなどが耐えきれるのだろうかと脳裏によぎる瞬間がありながらもおばちゃんの指示通りに身体をまかせていく。
ゴッドハンドを持つおばちゃん達は少し触っただけでもその人の状態がわかるのだろう。その人によって施術方法を少し変えているように思えた。先輩は気持ちよさそうにスヤスヤ寝ていた。
施術が終わると身体が軽くなった自分がそこにいた。
そんな昨日の記憶…
タイのオイルマッサージは凄いという記憶を思い出しながら、朝食会場へ向かう。ビュッフェスタイルで今まで行ったホテルの中でも品ぞろえが非常に良い。
昨日飲みすぎたであろう顔をした先輩達が数人朝食を食べに会場へ集まってきた。
僕の目の前に座った先輩は漫画のような大盛りご飯に納豆をかけ海苔をムシャムシャ食べている。不変…。日本と同じ生活をこちらでもしたいのだろう。
僕が目を付けたのはカレーだった。日本のそれとは違うシャバシャバのカレー。もちろんタイ米だ。
何年前だったかの昔、米不足か何かでタイ米を食べなくてはいけなくなった時の嫌な記憶があったがその記憶とは一変このホテルのカレーは本当に美味しかった。
というか知っている味
いなばのタイカレー
日本では100円ほどの価格で缶詰で売られていてあまりにも売れすぎて増産、値上げしたことは記憶に新しい。
全く同じ味。たしか“いなばのタイカレー”は現地タイで作っているということを聞いたような記憶があったがそんなことを思い出しながら「美味いな~」とずっと言いながら僕は食べ続けていた。
そんな僕を見て先輩から
「けんちゃん今日どうするの?」と声をかけられた。
昨日はゴルフ、明日もゴルフ。実は今日しかフリーの時間がない旅程なのだ。
僕は「寺院見学に行こうと思っています」と話すと他の先輩はあまり興味がないように午前中に2時間マッサージをしてくると一様に言っていた。昼は皆で食べるから帰ってきなよと。
かくして僕はひとりでバンコクの街へと行くことになる。
ホテルのロビーで行きたい寺院を三ヶ所くらい話す。もちろん英語で。どうやら現地までタクシーを使ってその後川があるので船を使えとのとこだ。
ホテルのロビーのお兄さんは「入るにはパスポートが必要だから持って行って」と付け加えられた。
バンコクのタクシーは世界でも最安値に入るらしい。なので臆することなくガンガン使うべきらしい。
まずはワットポーを目指しタクシーへ乗り込む。日本ではほとんどいなくなったマニュアルのタクシーだ。ただひどくギアが入らないらしく、ギアチェンジをする度に
ガガガ!
と体験したものなら誰しもが知る不快な音がずっと車内に鳴り響いていた。
そんな音と共に車外を見渡すと、バンコクの朝の道路事情は東京に似ている。渋滞がひどい。タクシー内のメーターを見てみるとどうやら時間で上がっていくものらしい。
1バーツ = 約3.4円
東京でメーターがどんどんあがっていくとあっという間に3000円くらいの距離だったように思う。
料金は75バーツ前後。破格に安い。大体の距離と料金。これが今後の物差しになるので必要な情報だと感じた瞬間だった。言い値やごまかすタクシーの運転手がここバンコクでは非常に多いらしい。
タクシーを降り地図を頼りに歩いていると一人の男性に声をかけられた。英語で彼は矢継ぎ早に僕へ質問を投げかける。
どこから来たの?到着したのはいつ?何日くらいいるの?仕事で来ているのか?どこへ行きたいの??
おそらくこのような会話だったと思う。名前は聞かなかったがバンコクで先生をしているらしい。近くに小学生くらいの子供の集団がいて引率しているようだった。僕は寺院見学をしたい旨を伝えると、その後このバンコクの先生から衝撃的な言葉を聞くことになる。
「朝9:00~12:00までは入れない。」
「その時間はタイ人オンリーなんだ」
「マジで??」
僕はマッサージ組に別れを告げ、寺院見学へ一人で行ってくると言っておきながらこのザマだ…ここまで来て何も見れないのか…。
その時バンコクの先生からこのような提案があったのだ。
「3つのお勧め寺院とタイシルクのお店があるからそこに行ってみたら?そんで12:00以降に戻ってきたらいい」
「おぉマジか。でも昼ごはんを食べに戻らなきゃいけないから、とりあえずそのお勧めに行くよ」と僕
僕は正直あまりバンコクのことを調べていなかったのでワットポー・ワットアルン・ワットプラケーオの3つに行ければいいと思っていたので他の情報なんぞは持ち合わせていなかった。
しかもバンコクの先生「トゥクトゥクで行くといい」と言ってきた。
トゥクトゥクとはバンコク名物の3輪バイクタクシーだ。ドアなどはなく、ダイレクトにバンコクの風を感じることができる。
先生いわく「私が交渉するからすべての行程を回って50バーツだ。見学している時は運転手は待たせる。お金は必ず最後に渡すんだ」と事細かに僕へ指示すると、大きく手をパンパン!と叩き
ヘイ!トゥクトゥク!!
と大声で呼ぶと気付いた運転手がやってきた。先ほどのルートを説明するとじゃ!と言ってバンコクの先生は去って行った。

バンコクの先生
人生で初めてのトゥクトゥクがこんな形で乗れることに驚きつつ、先生への感謝と共に指示された寺院へ行く僕だった。

先生が書き残した場所 50バーツと書いてある
石屋のけんすけタイの寺院へ行くその2へ続く
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この記事を書いた人

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- 創業明治10年東京都上板橋の石材店清水屋5代目社長の清水健介です。令和元年に5代目就任。学生時代からやってきた納骨回数は2000回を超える。お墓、石のことなら何なりとご相談をいただければと思います!お墓を作ったはいいけど、コケだらけなんか嫌!“また会いに行きたくなるお墓つくり”を提案しています。髪がくるくるしているけどパーマじゃない。これは無料パーマだといいつづけている。全国石製品協同組合 理事、東京都石材業政治連盟 幹事長。
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